ヤンマーの学生時代にやっておくべき論

18卒 外資メーカー内定 東工大生がお送りするブログ。巷にあふれたステマに辟易したため、自分の頭で考えることをモットーに日々研鑽している。情報には意図があり、それを見抜く観察力を養うことが現代社会では求められている。そのコツをブログを通じて提供していきたい。ステマはしないが、ダイマはするから!笑

フィナステリドの実態を臨床データから検証(プロペシア、フィンペシア)

 

ハゲ関係のコラムを執筆していたら広告欄がハゲ関係の情報だらけになってしまい、非常に不快な状態となってしまった(苦笑)。

インターネット検索をする際は英語で調べるか、プライベートモードでやらないとゴミ情報ばかりはいってくるから気をつけよう。

アフィサイトではどうにかフィナステリドとミノキシジルの悪口を書いてステマ商品を買わせようとしているようなので、医薬品の安全性を検証したいと思う。

常識的に考えて大手製薬会社MSD(旧万有製薬)が作った厚生労働省認可の薬より安全な発毛剤なんてないんだよなぁ。

たまには理系らしい記事も書きたいところなので製薬会社が作った製品の臨床データを紹介しよう。

 臨床データとは?

つべこべ言わずにまずは見てみよう

https://www.msdconnect.jp/static/mcijapan/images/if_propecia_tab.pdf

製薬会社は合成実験、動物、治験患者にお金をかけて様々な臨床実験をすることで薬の安全性を証明しなければ販売することができない。

そのデータをまとめたものがインタビューフォームである。

背景から手順、結果まで載っており、論文のお手本と言える内容となっている。

理系の大学で勉強しているヒトなら読めなきゃまずいと思うレベル。

全部紹介していたらとんでもない量になってしまうので、注目すべき内容を列挙する。

  • 臨床効果
  • 薬理作用
  • 血中濃度

これらを紹介する前に大事な概念を説明したい。

半減期とは

文字を記入するのが面倒なため引用をする。

ただし、一部書き換えている。

半減期とは薬の濃度が半分になるのに必要となる時間のことを指す。

これから数学的にそれが成り立つことを証明する。

 

投与された後に血中に存在する薬の濃度は徐々に減っていくが、時刻$t$および微小時間$t+\Delta t$ で残っている薬の濃度を$N(t)$$N(t+\Delta t)$とするとその間の濃度減少は$N(t)$に比例し、かつ時間$\Delta t$にも比例するので以下のように書ける。$\lambda$は減少定数で各々の薬に対してだけ成り立つものである。

\begin{eqnarray*}
N(t) - N(t + \Delta t) = \lambda N(t)\Delta t
\end{eqnarray*}

これを変形すると以下のとおり微分方程式が得られる。負符号は減少を表す。

微分方程式とはグラフの傾きを表したものであり、血中濃度は常に下がっている。

つまり、下り坂なグラフを描くことになるため傾きは常にマイナスである。

これを任意の区間で積分することでNが得られる(公式は自分で調べて)。

eはネイピア数であり、文系で勉強していないヒトは数学Ⅲで取り扱われているので調べてみよう。

二つの条件と二つの未知数が与えられているため、方程式を解くことができる。 

\begin{eqnarray*}
\frac{{dN}}{N} = - \lambda dt \\
\int {\frac{{dN}}{N}} = - ...
...    初期条件 \\
N_0 = \pm e^c \\
N = N_0 e^{ - \lambda t}
\end{eqnarray*}\begin{eqnarray*}
\frac{{N(t + \Delta t) - N(t)}}{{\Delta t}} = \frac{{dN}}{{dt}} \\
\frac{{dN}}{{dt}} = - \lambda N
\end{eqnarray*}

ここで濃度が半分になるまでの時間を半減期といい、$T$で表すことにした。すなわち$t = T$のとき$N = \frac{{N_0 }}{2}$(最初の濃度の半分)ということになるので、以下のように変形してNを求めることができる。

\begin{eqnarray*}
\frac{{N_0 }}{2} = N_0 e^{ - \lambda T}\\
\frac{1}{2} = e^{ ...
...{\frac{t}{T}} = N_0 \left( {\frac{1}{2}} \right)^{\frac{t}{T}}
\end{eqnarray*}

また、$\frac{1}{2} = e^{ - \lambda T} $より、代入することにより目的となる式が記述できる。

\begin{eqnarray*}
2 = e^{\lambda T} \\
\log _e 2 = \lambda T \\
\lambda T = 0.693 \\
\frac{{dN}}{{dt}} = - \lambda N = - 0.693\frac{N}{T}
\end{eqnarray*}

この式を用いて曲線を描くと半減期を記述することができる。

横軸5つ分進むたびに縦軸の値が1→0.5→0.25→0.125と濃度が半分になることがわかるだろう。

\includegraphics[scale=1.7]{hangenki.eps}

半減期の式の導出

つらつらと紹介してきたがあらゆる事象で半分になる時間が存在する。

薬の分野ではどれだけの期間まで成分がとどまっているのかを確認するため、大変重要な項目である。

半減期が短いならば薬を飲む頻度が高くなり、半減期が長ければ一回の服用量を減らすべきであると言える。

 

臨床データの解釈

これから臨床データの抜粋を示す。

捏造していないならば正確な情報なはずである。

頭部写真評価

f:id:masterofchemcal:20171221163254p:plain

値が大きければ大きいほどハゲが治っているということである。

たとえばデータ数の多い既往歴なしのヒトのデータを見ると、

1 ㎎投与した場合は平均して0.657だけ回復しているということがわかる(最大1.362、最小‐0.048)。

つまりごく一部ハゲが進行している人もいるものの、たいていのヒトは改善が確認できたというわけである。

たいしてプラセボ(薬を投与させるフリ)を行った患者の平均値は‐0.238と後退している。

全体的にみても、投与されているヒトの群は平均値が+であるのに対して、投与されていない群の平均値は‐であった。

すくなくとも0.2 ㎎のフィナステリドを毎日投与することでハゲの進行を抑える働きはあるようだ。

 

社内データ

以下に要点を列挙する。

  • DHTは減少したが、テストステロンは減少しなかった
  • ベニガオザル(人間同様にハゲる)に投与したところハゲが改善された
  • マウス、ラット、ウサギにおいて他のホルモンの阻害は行われなかった

 

薬物動態(薬がどれだけ留まるのか)について

投与量と投与日数別にまとめられたものが下の表である。

f:id:masterofchemcal:20171222225827p:plain

T,t,Cの3つに注目したい。

まずTmaxは最大濃度に達する時間である。

つまり、投与してから1~2時間で濃度は最大値を迎える。

寝る前に飲めば髪が発育する時間に効果を最大化できそうだ。

 

次にt 1/2であるが、これは半減期である。

およそ0.2㎎の場合はおよそ3時間、1㎎の場合は約4時間と書いてあるのでそれぞれ24時間後に1/128、1/32まで成分が薄まるということである。

 

最後のCmaxは濃度の最大値である。

最大値を過ぎてからは半減期tに遵って濃度が半減する。

0.2 ㎎のフィナステリドを毎日服用して効果があるとのことなので、血漿中濃度が0.015 ng/mLまで濃度が減少しても効果が続くということとなる。

 

ちなみに1 ㎎の場合に血漿中濃度が0.015 ng/mLとなるのは40時間後となる。

つまりフィナステリドの濃度だけ考えれば、1 ㎎の場合は2日に一度服用すれば十分であろう。

 

続いて経過時間に対する血漿中濃度を示したものが以下のグラフである。

f:id:masterofchemcal:20171222230006p:plain

表で解説した通り、0.2 ㎎の場合は3時間ごとに濃度が半減しており、同様に1 ㎎の場合は4時間ことに濃度が半減していることがわかるだろう。

 

胎児への影響

  • 妊娠したマウスに5 ㎎/kg(=250 mg/50 kg!)投与したが、胎児内の移行率は0.005%未満である
  • 投与男性の精液内のフィナステリド濃度を測定したところ、男性のうち60%は検出されなかった
  • 検出された男性のうち最も濃度の高いデータを使用した場合に胎児に影響するかどうか推算した
  • 結果はフィナステリドによるアカゲザルの発育異常をきたす最低値の1/750倍未満となる値だった

 

代謝成分(フィナステリドの変化成分)について

f:id:masterofchemcal:20171222233832p:plain

  • 代謝物の持つ5αリダクターゼを抑制する効果はフィナステリドと比べて少ない
  • フィナステリドは完全に分解されて、代謝物のみが尿により排泄される

ポストフィナステリドについて

フィナステリドを投与したせいでテストステロンが減少することでEDや精子量が減少するおそれがあり、フィナステリドは使うべきではないと主張する病院や財団があるそうだ。

しかし本当なのかは知らない笑。

というのもまともな情報が出てこないからである。

 

不安をあおる割には説得力のある情報がない、というか薬のデータでテストステロンが減少しないと言っている以上、別の商品を買わせるコンプレックス商法にこぎつけたいだけなのではないかと思われる。

フィナステリドを使うのは40~50歳のおじさんがメインだと考えられるので単に老いぼれただけだろう。

EDは精神的なものに依存するそうなのでこれこそプラセボの臨床対象ではないか?

ちなみに候補に出てくるのは謎の赤外線レーザーばかり、アフィリエイトフィーが高そうである。

 

アトキンスは最新版よりもB5サイズの第4版の方が読みやすい 

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